新たな基礎学問の必要性

要素還元的なミクロの視点をベースとした医療は様々な臨床医学をベースに行われており、その臨床医学の基礎となっているのが基礎医学と呼ばれる学問分野です。現代医療は様々なテクノロジーの進化と知識の発展により臨床医学が非常に細分化され多岐にわたっています。その全ての臨床医学は解剖学、生理学、生化学などの基礎医学を基にしています。

世の中にはこれらの現代医学、標準医療と呼ばれるものの他に、補完代替医療と呼ばれるものがあります。補完代替医療とは英語のComplementary and Alternative Medicineという言葉を日本語に訳したものになります。アメリカ国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)の中にアメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH: National Center for Complementary and Integrative Health)という組織があります。そのホームページ(https://nccih.nih.gov)の中で補完代替医療として、薬草(漢方)、ビタミン、ミネラルなどの自然由来の製品や心身医療としてヨガ、カイロプラクティック、オステオパシー、瞑想、鍼灸、太極拳、気功、催眠療法、フェルデンクライス、アレキサンダーメソッド、ピラティス、ロルフィングなどが列挙されており、補完代替医療とは“従来の医療と共に用いられる(補完)または従来の医療の代わりに(代替)用いられる主流ではない医療”と明記されています。

補完代替医療の多くは人体を一つのシステムとして捉えた全体論的な考え方を基礎としています。要するにマクロな視点で人体を捉えた臨床医学は我々の周りに非常に多くの形で存在をしているのです。しかし、科学という世界において人体をマクロな視点で見るための基礎的な学問となる分野が明確に存在をしてこなかったのです。そのため現在では補完代替医療を科学的に分析しその有効性と安全性を検証するという取り組みが広く行われていますが、その際に要素還元的な基礎学問である、解剖学、生理学、生化学などの考え方を基盤に、全体論的な臨床医学を研究考察するという矛盾が生まれてしまっているのです。マクロな全体論的な視点で人体を理解するための基礎学問というものが大きく欠如してしまっているのです。

どちらが優れているのか論争

現在までの医療は大きくまとめると、標準医療と呼ばれる要素還元的なミクロの視点を基盤として発展をしてきた西洋医学と、補完代替医療と呼ばれる全体論的なマクロの視点を基盤に発展をして来た伝統医学によって構成をされています。西洋医学は科学をベースに様々な研究と臨床データにより素晴らしい発展を遂げ多くの人々を救って来ました。同時に伝統医学も人間の長年の経験と叡智の集合体として多くの人々の幸せに貢献をして来たのは間違いありません。

しかし、長年この2つの分野はなかなか相入れることがありませんでした。西洋医学の世界の中には伝統医学を科学的根拠がない迷信だとして否定的に捉えている風潮が強く、また伝統医学の方でも西洋医学に対し薬はダメだ手術はダメだと過剰に敵視をしてしまい何が正確な情報なのかがわからなくなってしまっていることが数多く見受けられます。どちらもがそれぞれの分野を否定し合い、“あっちが間違っていてこっちが正しい”と主張をし合っていたのが今までの医療なのです。

新しい時代

新しい二元論の時代を迎えるにあたり、要素還元的なミクロの視点と全体論的なマクロの視点のどちらが優れているのかという論争は全く意味をなさないものとなります。そのどちらもが等しく重要で今後の医学、医療の発展のために欠かすことのできない両輪として存在する必要があるのです。どちらが優れている論争の時代から、我々はミクロとマクロの両方の視点から人体を捉える医学と医療が形作る全く新しい時代を迎えるのです。

この新しい時代を迎えるにあたり、大きな空白である全体論というマクロの視点で人体を理解するための基礎学問を発展させる必要があります。テクノロジーの発達により脳科学などの様々な分野が大きく発展したことにより神経学というものがこの部分を埋める一つの重要なピースとして存在をしています。そして、全ての基本となる、人が動的に環境の中に存在するということを研究する動作学がもう一つの重要なピースとなるのです。

このブログは、全ての人への愛と人類の限りなく明るい未来のために、医学と医療をより発展、進化させて次の世代へと繋げていくための提案です。

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