我々は中学校の生物や化学の授業から始まり、その後高校、専門学校、大学と学びを深めていく中で原子や分子、細胞、そして人間の脳や神経について様々な知識を吸収していきます。しかしその学びの過程の中で我々は実際とは異なる静的なイメージを持ってしまっているのではないでしょうか?
動き続ける原子
例えば化学の授業で原子の仕組みを学ぶとき、下のイメージのような図が教科書に載っていたかと思います。
原子の真ん中に原子核があって、それは陽子と中性子でできていて、その周りを原子が回っている、とこんな説明だったかと思います。
この映像は原子の構造を3Dアニメーションにしたものですが、イラストではなかなかイメージをすることができない、動き続ける原子本来の姿を見ることができます。
動き続ける細胞
そして生物の授業では、このような細胞のイメージが必ず教科書に載っています。
ハーバード大学では医学部の学生が正しい細胞のイメージを持てるようにということで医療イラストレーター/アニメーターのDavid Bolinsky氏の協力などを得て、細胞の内部活動のアニメーション映像を作成をしました。
今までの教科書に載っていた静的なイメージからは想像もできないような、活動的で動き続ける本来の細胞のイメージを受け取ることができるのではないでしょうか?
この図は1秒間に細胞内で起こる化学反応をまとめたものになります。これほど複雑に相互作用した化学反応が、細胞の中では絶え間無く1秒たりとも休むことなく続いているのです。
動き続ける脳
解剖の教科書には必ず下のような脳のイラストが載っています。
コンピューター会社であるIBMとスイス人のHenry Markram博士が率いるBrain and Mind Instituteが共同で行っているBlue Brain Projectでは、人間の脳全体の活動をコンピュータシミュレーションによって最終的には分子レベルで構築するということに取り組んでいます。
下の映像はその第一段階として実験用ラットの新皮質コラムの電気活動をアニメーション化したものです。新皮質コラムとは大脳新皮質の最少機能単位と考えられているもので、大きさが高さ2ミリ、縦横0.5ミリになり、その中にラットの場合1万個の神経細胞と1000万個のシナプスがあります。Blue Brain Projectではこの神経細胞の位置や形態および発火特性を詳細に分析し、そのデータをもとにアルゴリズムを組み、スーパーコンピューターを使ってこのような映像を作り上げたのです。
人間の脳には1000億個の神経細胞と150兆個のシナプスが存在すると考えられており、単純に考えると人間の脳内ではこの映像の、神経細胞の数でいうと1000万倍、シナプスの数でいうと1500万倍の電気的活動が行われているということになるのです。そしてこの電気的活動は我々が生まれてから死ぬまで1秒たりとも休むことなく、我々が起きている間も寝ている間も続いているのです。
そう、全ては動き続けているのです。その動き続ける、動的に変化し続ける中で何らかの平衡状態を維持すること、それこそが生命が宿るということなのではないでしょうか?
このブログは、全ての人への愛と人類の限りなく明るい未来のために、医学と医療をより発展、進化させて次の世代へと繋げていくための提案です。